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イメージ写真3

プロトコール

Lysis bufferの選択方法
(適宜 Protease inhibitor Mixを x1(細胞)~x5(組織)の濃度で加える)

020410 by Araki
020525 改訂第1版

・CHAPS Lysis buffer(10mM CHAPS, 150mM NaCl, 1mM NaF, 1mM Na3VO4, 10mM Na-Phosphate pH7.4)

(1 litter)
10x PBS  100ml
CHAPS(DOJINDO) [MW 614.89]  6.1489g
0.5M NaF  2ml
50mM Na3VO4 20ml
mess up to 1 litter

穏和な可溶化剤であるCHAPSを用いた可溶化剤。PBSを緩衝剤としている。Phosphatase  inhibitorのNaF ,Na3VO4 が入っている。APP-X11Lの結合を保存しつつ、膜蛋白であるAPPを効率的に可溶化可能で、有用性が高い。組織、細胞共に使用している。CHAPSは臨界ミセル濃度ぎりぎりなので、薄めない様に注意。

RIPA(S) buffer(0.1%SDS, 0.5%DOC, 1%NP-40, 150mM NaCl, 50mM Tris-Cl pH8.0)

(1 litter)
1M Tris-Cl pH8.0  50ml
5M NaCl  30ml
10%NP-40  100ml  (or  NP-40 10ml)
10%DOC  50ml  (or  DOC  5g  or  DOC-Na  5.28g)
10%SDS  10ml   (or  SDS  1g)
mess up to 1 litter

イオン性界面活性剤であるSDSまで入ったかなり強い可溶化剤。とにかくサンプルの蛋白を効率よく可溶化したいときに用いる。また強い条件 であるが、ほとんどの抗体でIPが可能である。不思議なことにAPPの可溶化率はCHAPSと比べてそれほど良くない。かなり不溶性画分に行くので注意が 必要。

HBST(0.5) (0.5%TritonX-100, 150mM NaCl, 10mM HEPES pH7.4)

(1litter)
20%TritonX-100   25ml (or NOT RECOMMENDED  TritonX-100  5ml)
10x HBS(100mM HEPES pH7.4, 1.5M NaCl)   100ml
mess up to 1litter

APPを効率的に溶かすBufferとして開発、条件検討したもの。ほぼ100%のAPPを溶かすことができ、しかもAPP-X11Lなどの結合は保存する有用なbuffer。大部分の膜タンパク質はこのbufferによって、ほぼ完全に可溶化されると考えられる。IP, Co-IP可能。

Cell lysis buffer(0.5% TritonX-100,  0.05%2-ME,  0.5mM EDTA,  0.5mM EGTA, 1mM Na3VO4, 125mM Sucrose, 25mM Tris-Acetate  pH8.0)

(cell lysis buffer 100ml 分)
2.5ml of 1M Tris-Acetate pH8.0
6.25ml of 2M Sucrose
0.1ml of 0.5M EDTA
0.2ml of 0.25M EGTA
0.5ml of 0.2M Sodium Ortho Vonadate (Na3VO4)
50μl of 2-Me

Mix・
100mM Tris-HCl pH7.4,  2.2% SDS,  5.44M Urea

これで直接、可溶化も行える(強い条件)。

Tissue Lysis buffer(1% SDS, 4M Urea, 1mM EDTA, 150mM NaCl, 50mM Tris pH8.0)

(Tissue Lysis buffer 500ml分)
25ml of 1M Tris pH8.0
1ml of 0.5M EDTA
15ml of 5M NaCl
120.12g of Urea
/ DDW 490ml
5g SDS
/DDW 500ml
 

6M Guanidine / PBS 組成は名前の通り

 coiled-coilを含む蛋白複合体を破壊したいときに可溶化バッファー、もしくは可溶化後の処理用として用いることがある。組織からAβを可溶化するときにも用いている。
JBC 275,27901-908  組織に4volのTris-Saline(50mM Tris, 150mM NaCl)を加え、テフロンホモジェナイザーでホモジェナイズ、遠心して不溶性ペレットを集め、同Volの6M Guanidine/ 50mM Tris を加え、Brief Sonicationする。265000xg 20分遠心し上清を1:12で希釈してsELISAに用いるサンプルにする。

FA buffer(70% Formic Acid/ DDW)

AβペプチドをRIPAより効率よく抽出するらしい(JCB 141, 1031-1039, 1998)。
RIPA->FA Method/ 細胞をPBSで2回洗い、600μlのRIPAにとかす。40000x g で20分遠心し上清はそのままsELISAに用いる。pptを70%Formic Acidにresuspendし、sonication until clear. 1.9ml 1MTris-Baseを加え、1:3に水で薄めてsELISAに用いる。
Direct Extraction Method/ 細胞をPBSで2回洗い、PBSで細胞を剥がして回収、2000 x gで2分遠心し、集めた細胞を100μlのformic acidで可溶化する。40000 x g 20分遠心し、上清を上記と同じように中和してsELISAに用いる。

Buffer A(10mM HEPES pH7.4, 0.32M Sucrose)

Subcellular Fractionationの時に用いる基本バッファー。界面活性剤が入っていないので、Dounceなどのホモジェナイザーによる細胞破砕のみになる。
目的により、PI mix, 1mM EDTA, EGTA, Mg++, Ca++を加えることになる。 
EDTA は 2価イオンのキレーター。
EGTAは Ca++のキレーター。
Ca++, Mg++ は膜安定性に寄与するので、核や細胞内膜系小器官を取りたいときに入れておく。Ca++は様々な生理活性を持つ場合が多いので、1-2mM MgCl2,  0-1mM CaCl2がよく用いられる。


(Protease inhibitor Mixの組成)

STOCK SOLUTION
5mg/ml Leupeptin  セリンプロテアーゼ(トリプシン、カテプシンB,パパイン)インヒビター
5mg/ml PepstatinA アスパラギン酸プロテアーゼ(ペプシン、カテプシンD)インヒビター
5mg/ml Chymostatin  セリンプロテアーゼ(キモトリプシン)インヒビター
in DMSO (-20℃で保存)

他に 0.5-5 mMでEDTA-Na (メタロプロテアーゼインヒビター)を加えることがある。

細胞を可溶化するときは可溶化バッファーに 1/1000で加える。
組織の時は、2-20倍量でも使用する。



Stable cell作成方法
2003.10.3 Araki

哺乳類細胞における、安定的発現細胞株の樹立
目的の遺伝子を哺乳類細胞発現ベクターにクローニングした後、機能的(一過的発現では機能しない)もしくは量的(プロテインシークエンス用にCBB染色で確認可能なくらい大量の蛋白を得たい)な理由によって、安定的発現細胞株を取得した方がいい場合がある。

手順

HEK293細胞を例に取って説明

1.(Day1)細胞にLipofectAMINE2000(Invitrogen) などを用い、発現ベクターに入った遺伝子を導入する。

2.(Day2)24時間後、増殖速度に応じて1/10〜1/40で10cm dishにまき直す。293の場合、1/30で良好な結果が得られる。

3.(Day3)さらに24時間後、発現ベクターに入っている選択マーカーにあわせた薬剤入り培地にmedium changeする。
細胞によるが、293の場合
Geneticin(G418) 600-1000μg/ml
Hygromycin B  250-550μg/ml
Zeocin  400-800μg/ml
の濃度で選択マーカーを加えると良い。耐性ベクターの入っていない細胞が1週間程度で全滅するくらいの濃度がよいだろう。事前にAssayを行っておくか、数通りの濃度で実験を進めていくのがおすすめ。

4.1週間に2回、コロニーが成長するまで根気よく培地交換をする。薬剤を加えてから14-16日目くらいにコロニーが生えてくる。

5.(Day17くらい)コロニーの単離。キャップ法を用いている。Dishの培地をすう。ワセリンをキャップの底面に押しつけ、コロニーが中にはいるよ うに手早くのせていく。培地が乾燥して細胞が全滅しないよう手早くおこなう(バイオ実験イラストレイテッド6巻 細胞のクローニング参照)。キャップの中 に培地を入れ、pipettingではがし24穴のdishに移す。

6.目的に応じて、安定的発現細胞株が得られているか調べる。というのも薬剤耐性マーカーだけを取り込んで目的の遺伝子を発現していない細胞が相当数いるからである。育て方の例として24穴でコンフルエントになったら、WB用に24穴と、スケールアップ用に6穴 dish(次回継代時に10cm dishなど)にまく。 WBして発現が確認できた細胞のみ6穴->10cm にスケールアップしていく。全部で1ヶ月ほどかかる。

実験の注意点
○選択薬剤は最終的に10cm dishにスケールアップするまで加え続けている。途中で遺伝子が落ちてしまった細胞をのぞいて、確実に目的とした遺伝子を発現した細胞だけスクリーニングしてくるためである。