研究テーマ−糖

高選択的グリコシル化反応の開発とオリゴ糖鎖・配糖体の合成

 細胞表層に分布する複合糖質(糖脂質、糖タンパク質およびプロテオグリカン)糖鎖部が示す生理的意義および疾病との関わり、さらに抗がん性含糖抗生物質の活性発現に糖鎖部が不可欠なことが明らかにされるにつれ、有機合成化学の分野でも糖質合成の根幹をなすグリコシル化反応の開発およびオリゴ糖鎖の効果的構築法の開発が重要な課題となっています。
 一般にグリコシル化反応の成否は糖の種類に大きく左右される上に、糖供与体の脱離基および保護基、受容体水酸基の求核性、反応剤、溶媒等の要因が複雑に絡まるため、それを予見することさえ困難な場合も多いことが知られています。

 当研究室では上記要因の中でも糖供与体の脱離基が支配的要因を成すとの考えのもとに、従来にない特徴をもつ糖供与体の創製を目指し、特にリン原子を中心元素とする脱離基に着眼しました。リン原子は種々の元素で修飾容易なことから多様性に富む脱離基の設定が可能です。
 すでに、ホスファ−ト、ホスフィンイミダ−ト、ホスホロジアミドイミドチオア−トを脱離基に組み込んだ糖供与体を基盤とする高選択的グリコシル化反応を達成していますが、最近、3価のリンであるホスファイトを組み込んだ糖供与体が著しく高い反応性を示すことを見い出しました。これらの脱離基を組み込んだ各糖供与体は、反応性の違いを反映してそれぞれ特徴ある反応条件の設定を可能にします。
 したがって、この分野において究極の合成戦略と目される"armed/disarmed"糖供与体概念を基盤とした生物活性オリゴ糖鎖合成への展開が期待できます。

 また、これまでに開発したグリコシル化反応は極めて緩和な反応条件の設定を許容することから、副作用の軽減を目的とした含糖抗生物質および各種配糖体の糖質部の改変を試みるとともに、薬物ターゲッテイングあるいはプロドラッグの可能性を秘めた糖コンジュゲート医薬品(薬理活性物質あるいは医薬品 に糖を結合した複合体)の開発を行っていきたいと考えています。

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北海道大学大学院薬学研究院 薬品製造化学研究室

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