卒業生からのメッセージ

Tさん 平成18年 修士課程修了(現)田辺三菱製薬株式会社

 私が北大を選んだのは北の大地への憧れで、興味のある薬学部があるからラッキーといった具合で楽観的に進路決定しました。 札幌は期待以上でした。夏は緑が眩しく快適で、冬は涙が出る寒さ。凍結した道での怪我や吹雪など、厳しい思い出がたくさんあります。一度、広大な北大の敷地内でホワイトアウトに遭い、死を覚悟しました。しかしやはり最大の魅力が雪。乾いた雪が降る夜は、自分の呼吸しか聞こえないほど静かで、幻想的な世界を味わえます。
 薬学部に入った私は、専門科目は理系ばかりだからと、一般教養でなるべく文系科目を履修しました。「映画論」「プラトン」「サケ科学」など…北海道らしさと、総合大学の恩恵を存分に受けることができました。
 憧れの札幌での生活が楽しすぎて、勉強を疎かにした時期もありました。振り返れば、単位をギリギリ取れるよう綿密に計算し、テスト期間だけ必死にがんばるような学生でした。
 3年目、薬学部の実習が始まり、やっと毎日大学に通う生活が始まりました。真面目な大学生活が送れるか不安でしたが、実習が想像以上に楽しく、自然と大学中心の生活になりました。遅まきながら、勉強する楽しさを知り、薬学の面白さに魅了されたのです。それまでほとんど勉強していなかった私は、卒業までかなり必死で、薬剤師国家試験では修行僧のような追い込みをかけ、ギリギリ合格を勝ち取りました。
 その後修士課程で二年間学び、現在は製薬会社で研究の仕事をしています。「薬を創る」過程には、膨大な知識と経験が必要で、卒業間際に必死で勉強した私がとても小さく感じられます。その知識と経験は、大学時代に学んだ(であろう)ことすべてが土台になっていて、薬学部の講義の大切さが後から後から分かってきます。大学時代、最初から勉強していれば、もっと優秀な研究者になれたかもしれません。しかし、物事の大切さを後から実感することと、後悔することは違います。大学時代に勉強とは別の部分でも充実した時間を過ごせたのは、今の私の宝物だし、研究者を目指したいと思って必死に勉強した毎日は、今の私の柱となっています。今は、今できることをコツコツ身につける毎日を送っています。

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