薬草園の紹介

薬草園の詳細

概要

ゲンチアナ Gentiana lutea リンドウ科

 本薬用植物園は、旧医学部薬学科時代設営され、その後、国立学校設置法施行規則の一部を改正する省令の施行により昭和51年5月10日付けで、薬学部に附属薬用植物園の設置が法制化され現在に至っている。本園は、北海道大学敷地内の中央部に位置し、薬学部本館に隣接し、総面積6,272平方メートル(約1,900坪)、標本園、樹木園、栽培園、実験栽培園並びに温室に区分されている。標本植物は、162科1,246種に及んでいる。なお、老朽化した温室は、昭和59年度改築増設された。

目的

サンシュユ 山茱萸
Cornus officinalis ミズキ科



 本園は、薬学部の教科である生薬学、天然物化学の教材植物のための標本園、並びに研究用栽培園を中核としている。また、北海道は、本邦における薬用植物栽培の一大拠点であり薬用植物栽培を地域社会に普及する中心的役割を果たしている。

特色

ゲンチアナ Gentiana lutea リンドウ科

 寒冷地は、薬用植物の宝庫であり、世界的に例えば中国四川省、中央欧州山岳地帯があげられる。北海道もこの点から薬用植物栽培の適地である。本園は、この点に主眼を置き、特に寒冷地に生育可能な薬用植物を中心に栽培を行っている。現在までに、本園において栽培法の確立した多くの薬用植物が北海道内に普及し、地域社会に貢献していることが特色の一つである。代表的薬用植物は、北海大黄並びにゲンチアナ・ルテアである。
 研究領域として、新しい有用薬用植物の導入、重要薬用植物の増産の手段として薬用植物の育種、或いは生物工学(バイオテクノロジー)を応用した育苗、生薬の有効成分の分離定量を通じ優秀品種の選別等教育研究面から次世代後継者の育成を含め地域社会への還元が行われており、数年前から民間で生産に入っている。

今後の計画

ボタン Paeonia suffruticosa ボタン科


 生薬類が、健康保健に加えられたため国内における生薬の需要は、飛躍的に増大したが、大半の生薬は輸入に依存している。この面を改善するため本園は、重要生薬の栽培試験、新しい薬用植物の導入、生物工学により大量栽培法の確立等の基礎研究を遂行する。このための職員組織の強化、水生植物園、化学実験室、生物工学実験室の充実拡大を計画している。

系統保存薬用植物

ダイオウ 北海大黄
Rheum palmatum タデ科

 大黄(Rheum palmatum 6系統、マル葉大黄系 5系統 計50株)及びゲンチアナ(Gentiana lutea 500株 その他のゲンチアナ属15種)は、本園の代表的な系統保存薬用植物であり、この2種類の特性は、次のとおりである。
 大黄は、ミュウヘン植物園から北海道大学農学部附属植物園に分与されたRheum palmatum(レウム パルマツム)種は、調製後の生薬についての薬理試験で優れた緩下作用を示し、同種は優れた品種であることが判明し、昭和30年以来栄養増殖により増殖している。最近茎頂培養により無菌苗の増殖が可能となった。Rheum(レウム)属の植物は、自花不和合性が強く、種間雑種を作り易く、形質を維持するため栄養増殖並びに茎頂培養により、純粋種を保存し「北海大黄」種として原種を維持している。定植3年目の秋季に収穫し、根茎部より生薬大黄を調製する技術開発もされた。大黄は緩下剤生薬として東洋において最も需要の多い生薬であるが、現在は殆どが中国から輸入されている。しかし、国際市場の関連から近時輸入大黄の品質低下が顕著出会って、国内生産の要望が高まりつつある。優良形質の大黄株を系統保存することは、本邦医療の面から必要なことである。
 一方、ゲンチアナは、苦味生薬として需要が大きいため、我が国において栽培試験が本州各地で行われてきたが、成功例は皆無であった。発芽に新鮮種子を必要とし、且つ低温条件を必要とするためである。本園での栽培成功により、北海道内での栽培が可能となった。昭和39年本園において採種が可能となり、道内数ヶ所において栽培が行われるに至った。 ゲンチアナは、苦味生薬として重要な生薬であるが、従来全量が輸入されていた。自生地は、ヨーロッパアルプス地帯であり、その類似の気象条件の北海道における栽培普及は、医薬資源確保の上で重要と考えられる。

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