北海道大学大学院 薬学研究院 創薬科学部門 創薬化学分野
薬化学研究室 Laboratory of Medicinal Chemistry
 

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 3. 機能性核酸の設計と細胞機能調節への応用

 A (アデニン)、G (グアニン)、C (シトシン)、T (チミン) の4種類のDNA合成用試薬を一本の瓶に入れてDNA合成機で30個の長さのDNAを合成したとすると、4の30乗本のランダムなDNAの混合物ができます。ある部分はA A A A…かもしれないし、G G G G…、あるいはA G T C…となっているかもしれません。つまり、さまざまな配列の組み合わせを持つ無数のDNAが合成できるわけです。このDNAを酵素でRNAに転写してから、標的タンパク質と混ぜ合わせます。そうすると4の30乗本のRNAの中で標的タンパク質と結合するものがあるはずです。そこでつぎに、結合したRNA を抽出して、酵素でDNAに戻し、さらにRNAとして増幅し、もう一度標的タンパク質と混ぜ合わせます。この操作を、結合させる条件を厳しくしながら何度も繰り返すことにより、低濃度でも結合力の強いRNAを見つけることが可能になります。結合するRNAの配列を決めることや、その配列を持つRNAを合成することは比較的易しいので、それらを診断薬や治療薬に応用できると考えています。

 しかし、天然のRNAは非常に不安定で、血中ですぐに壊れてしまったり、細胞膜をうまく透過しないという性質があります。まず、これを克服しなければなりません。我々は現在、RNAの糖部分のO (酸素) をS (硫黄) で置き換えた4’−チオRNAという、天然型RNAよりも数百倍安定なRNAを開発し、4’−チオRNAアプタマー (分子認識剤) の研究を進めており、ある程度結果が出つつあります。これが実現すれば、人工核酸を使ったプロテインチップを実現できると考えています。あるいは運が良ければ抗体の役割をする物質を作ったり、治療薬の開発にもつながるのではないでしょうか。

 抗体はタンパク質から出来ていて、非常に分子量が大きいため、これまでは細胞や動物を使って作らせて利用してきました。それに対し、この核酸を用いた場合は、分子量も比較的小さく、動物の力を借りなくても何度も大量に作り出すことができるので、コストも安く安全だと考えています。