北海道大学大学院 薬学研究院 創薬科学部門 創薬化学分野
薬化学研究室 Laboratory of Medicinal Chemistry
 

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 核酸の有機化学と創薬

 1. 抗癌および抗ウイルスヌクレオシドの分子設計と合成

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私たちは、核酸の構成要素であるヌクレオシドやヌクレオチドの有機化学的研究を通じて、これらと利用酵素やレセプターとの相互作用様式を明らかにして、その知見に基づき新しい医薬品候補物質を設計・合成し、医薬品として役立たせることを目的にしています。

癌の特徴は、癌細胞の無制限な増殖による正常組織への侵襲、破壊、および転移による他の組織への侵略を基本とする、いわば細胞が無政府状態にあることで す。固形癌の増殖は一般に非常に遅く、heterogeneousであることが知られています。DNA合成は細胞周期のS期でのみ起こるので固形癌では、 DNA合成阻害だけでは効果の高い治療法にはなりえません。私たちが分子設計・合成したDMDCやCNDACの主な作用機序はDNA合成阻害ですが、 RNA合成阻害も引き起こすことが明らかになりました。RNAは、M期以外のどの細胞周期でも合成されるので、両者の合成阻害が相乗的に働き固形癌に対し て強い抗癌性を示すと考えられます。現在、これらの化合物の固形癌に対する治療薬として臨床試験が行われています。もっと積極的にRNA阻害を引き起こす 化合物として分子設計したのがECydです。ECydはRNAポリメラ−ゼを阻害することで強力な抗癌作用を示します。またD4Tは、私たちが見いだした 逆転写酵素阻害剤であり、エイズ治療薬として日本でも臨床使用が認められています。現在も新規な核酸系代謝拮抗剤の開発研究を行っています。>詳細

 2. ヌクレオシド系天然物の有機合成化学

世界3大感染症の一つである結核は、世界人口の約三分の一が感染し、年間約200万人が死亡する感性症です。有効な薬剤が少ないことや、耐性菌出現の問題を有しており、新規な薬剤開発が望まれています。最近、薬剤耐性菌を含めた結核菌に有効で、毒性も極めて少ないCaprazamycin類が天然から見出されました。私たちは、これらのヌクレオシド系天然物に着目し、その類縁化合物であるCaprazolの初の全合成を達成しました。さらに、これらの化合物の構造を最適化し、より良い抗菌剤の創製を目指しています。>詳細

 3. 機能性核酸の設計と細胞機能調節への応用

現在、核酸分子よって細胞機能を調節する様々なアプローチが知られています。これらの方法を効率よく達成するには、核酸分子が、1)細胞内外に存在するヌクレア−ゼに対して耐性であること、2)細胞膜を十分透過することが必要です。これらの点を考慮して、私たちは有機化学的なアプローチによって核酸分子に機能を付与し、それを生体内でも利用可能な医薬品として開発することを目指しています。これまでに、遺伝子の特定の部位に巻き付いて転写を制御するアンチジーン法やmRNAと二本鎖を形成し翻訳を阻害するアンチセンス法の研究を行ってきており、私たちの研究室で合成したアンチセンス分子は、抗マラリア作用を示すことが明らかになりました。また最近、新たな遺伝子発現抑制機構として発見されたRNA干渉や次世代交代分子として期待されているアプタマーの創製研究も精力的に行っています。>詳細

 4. 遺伝子損傷の選択的検出法の開発

我々の遺伝子は様々な環境にさらされることで、常に損傷が起こっています。ほとんどの損傷は生体内で修復されることで、我々の体は正常な状態にあります。 しかし、修復されなかった遺伝子損傷は癌などの疾患の原因となることが明らかとなっています。このような遺伝子損傷を定量する技術が癌の診断に有効です。 我々は個々の遺伝子損傷部位を他の損傷核酸や通常の核酸等と分けて化学的に反応させる試薬の開発を行っています。これまでに、酸化損傷の一つである2-デ オキシリボノラクトン (L) の選択的検出法を開発しました。現在、ピリミジンの損傷の一つである5-ホルミル-2’-デオキシウリジンを選択的に検出する方法の開発を行っています。>詳細