羊膜は出産の時に医療廃棄物として廃棄される胎児付属物の一部ですが、その中に再生医療材料として注目されている間葉系幹細胞が多く含まれています。
私たちはこれまでに、羊膜から高純度かつ大量に間葉系幹細胞を分離・培養する方法を確立し、炎症性腸疾患や肝硬変、内視鏡的切除後の消化管狭窄などの動物モデルに対する効果を確認してきました。臨床応用をめざすとともに、作用機序の解明をすすめています。
2-1. 歯根膜幹細胞の臨床応用化研究
矯正治療で歯が動くのはなぜでしょうか?それは、歯とそれを支える骨(歯槽骨)の間に介在する歯根膜組織が、矯正移動のようなダイナミックな歯周組織の再構成が可能なほどの再生能力を有しているからです。このような有力な組織ソースから、再生能力に優れた歯根膜幹細胞を抽出・培養し、組織再生医療に応用できるかどうかの様々な検討を行っています。
2-2. 歯根象牙質を素材とした組織用移植材の開発研究
冷たいもので歯がしみるのはなぜでしょうか?それは、歯の根っこ(歯根)を構成する象牙質に象牙細管という直径10μm以下の目に見えないような無数の小さな管上の穴が開いているからです。この穴は、歯にしかない構造で、この穴を有効活用して、組織再生にとって最も重要な血液浸透性を阻害しない優れた組織再生用移植材が作れることを我々の研究グループが見出しました。この移植材は単独でも組織再生効果を発揮しますが、2-1で御紹介したような組織幹細胞の足場材としても有用であるため、組織再生治療にとっての名脇役になれる可能性を有しています。