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 模擬患者(Simulated Patient)又は標準模擬患者(Standardized Patient)の略語で、薬剤師などの医療職や医歯薬系の大学生などが患者さんとのコミュニケーションの練習や試験をするときに「患者さんの代わりをする人」のことです。
 実際の患者さんを相手にこれらの実習や試験を行うことにはためらわれることが少なくありませんが、模擬患者相手であれば実際に近い形で実習や試験ができるばかりでなく、繰り返して行うことも可能です。そしてなによりも、学生は模擬患者が感じた”患者の”の気持ちを聞くことができ、学生の自己評価を助けるという点で実際の患者相手では得られない大きな教育効果があります。


模擬患者(Simulated Patient)
患者背景やシナリオは用意されていますが、自由度は高く学生の問いや態度によって応対に変化をつけることなどが可能です。比較的長時間で、ねらいによって深いところまで設定します。普段の学習の場面で活躍されます。
標準模擬患者(Standardized patient)
一定の標準化された患者役を演じ、試験の場で必要とされる役です。どの学生に対しても同じ応答になるようにあらかじめ固定された問答などが準備されます。


必要に応じて練習できる
本当の患者さん相手に練習すると危険である
同僚や学生同士と比べて現実に近い
患者さんの気持ちを教えてもらえる

などの利点があるからです。
また、薬学部の学生が【臨床実習】に行く前に『客観的臨床能力試験(OSCE)』に合格することが義務づけられたことにより、薬学教育の中で標準模擬患者も必要になっています。


Objected Structured Clinical Examinationの略で、客観的臨床能力試験をいいます。医療系の学生が、病院や薬局において実務実習に臨む前に最低限必要な医療人としての技術や態度が身に付いているかを確認する試験です。自動車免許で言えば仮免の実技試験に相当します。その中で、医療面接(薬局でお薬をお渡しするときやベッドサイドでの服薬説明、お薬相談など)の試験にはSPの協力がないと成り立ちません。先ほど述べましたように、試験ですので標準模擬患者として臨んでいただくことになります。


下の表は名古屋大学医学部が2004年4月、全国の『模擬患者』を対象に実施したアンケート結果の一部(回答者332名)です。学生とのコミュニケーションを通して、新たな知識を得たり、考え方に変化が現れたりといった様々な効果がみられるようです。
<役立っているとかんじることは?(複数回答可)>
医師への情報の伝え方がわかる ・・・ 192名
医療情報が得られる ・・・ 108名
医療者を見る目が養える ・・・ 170名
学習者の熱意から活力を得る ・・・ 163名
仲間ができる ・・・ 107名
その他 ・・・ 62名

また、毎月の例会では教員その他医療従事者からの話題提供としてミニ講演を行っています。その時々での旬な話題を提供できるように心がけています。下は過去の演題の一部です。
・「加齢黄斑変性症とルテイン」
・「脳の役割と記憶」
・「一般用医薬品のコンビニ販売とインターネット販売」
・「ピロリ菌について」
・「ドラッグデリバリーシステム」
・「食中毒と腸管感染症のはなし」
などなど…


研修では『シナリオ』と呼ばれる台本にしたがって患者さん役になる訓練や、患者さん役として『ロールプレイ』をしたときの気持ちや考えたことを『フィードバック』する訓練をします。SP間相互で内容についてディスカションしたり、ビデオを振り返ったりして、より適切な方法を学んでいきます。また、ファシリテーター(ディスカッションを促す人)のアドバイスを受けたりもします。これらに参加していただき「やってみよう!」と思ってくださったとき、SP活動に参加する準備ができたことになります。
研修は、大学でのコミュニケーション講義担当者が責任をもって行います。また、研修ではSPのトレーニングの他に医療や健康に関するトピックを教員や医療従事者から提供したり(上記のミニ講演)、意見交換する場としても役立てていただく予定です。


すべての人が患者になりうるので、誰でも模擬患者を演じる能力を持っています。しかし、患者としての役柄を演じるために想像力と演技力が必要となります。また、医療の素人であった方が望ましいですが、医学の知識があっても素人をつらぬける方であればOKです。


シナリオをもとに役作りをします。症状のみならず、心理社会的な問題点(仕事、家庭、夫婦間の問題など)をしっかり理解し、患者になりきることでリアリティのある演技を目指します。


SPは北大の短期支援員として雇用され、時給が発生します。お仕事をお持ちの方は、勤務先に兼業可能かどうかの確認を行ってからのご協力をよろしくお願いいたします。交通費は条件付きで支給されます。



どなたでも病院や薬局で、横柄な態度や無愛想あるいは専門用語ばかりで一方的に説明する医者や薬剤師などの医療従事者に不快な思いをされたことがあると思います。そのようなご批判を反省点として、これまでの知識詰め込み型の教育だけではなく、医療従事者として現場に出る前に最低限のコミュニケーション能力を身につけるため教育を実践するに至りました。そのためには、教員が模擬患者をして形ばかりの研修をするのではなく、一般の方に協力をいただき、その場面場面で感じたことを学生にぶつけてもらうことが必要であり、その方が学生にとって何倍もの意義があるのです。

では、学生と模擬患者のやりとりの一例を挙げてみます。

学生: 今日はどうなさいましたか。
患者: 風邪を引いてしまって・・・
学生: 風邪ですね。もう少し詳しく話して下さいませんか。
患者: 一週間前からのどが痛くて、昨日から熱も出てきたんです。
学生: そうですか。熱はどれくらいあるのですか。
患者: はじめは微熱だったのですが、昨日から38℃台になりました。

学生の相手をして質問に答えているのは、予め設定された患者の病状を記憶し、その患者を演ずる模擬患者です。文字でみると普通のやりとりですが、実際には、学生の話し方や表情によっても患者が受け取る印象は大きく変わると思います。「私の方を見ながらゆっくりと話をされるので、よく理解できました」、「事務的な感じがしてちょっと冷たく感じました」など患者として感じたことを学生に伝えることによって(これをフィードバックといいます)学生が学習していきます。

実際の学生とのやりとりの様子(事前実習の一コマ)
 



現在、実際に活動しているSPからは、以下のような感想が寄せられています。
・薬局や病院での医療従事者への敷居が低くなった
・薬や医療情報が得られる
・学生の教育に携わっていると感じられる
・学生の熱意が伝わってくる
・薬剤師教育の現状を知ることができる
など…

〜SP新年会の様子〜SPとスタッフとの交流会・意見交換会として毎年行っています。
 


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