生化学、分子生物学、細胞生物学を基盤とした神経生物学の研究に取り組んでいます。大学院生の研究テーマは、教員の研究テーマと密接に関連していますが、「独創性(Originarity)」と「新規性(Novelty)」があれば、研究の方向性は研究担当者の自主性が重視されます。
神経科学研究室の主な研究テーマは、以下の通りです。
1. アルツハイマー病の発症機構に関わる生化学、分子生物学、細胞生物学。
2. 神経回路形成、脳構造形成に関わる生化学、分子生物学、細胞生物学。
3. 神経細胞内の膜小胞輸送機構に関わる生化学、分子生物学、細胞生物学。
1の研究テーマから派生する研究として、例えば、「アルツハイマー病原因因子βアミロイド(Aβ)の前駆体APPの代謝と機能」があります。 APPの代謝制御機構を分子レベルで解明する事は、アルツハイマー病の発症原因を解明する上で重要です。 関連する分子として、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の他に、 APP結合タンパク質X11-like
protein (X11L)、 JIP (JNK-interacting protein)や、X11Lに結合するタンパクとして単離したI型膜タンパク質アルカデイン(Alcadein)の機能を解析しています。これら分子の機能解析や疾患との関連性解析などが研究テーマです。
2の研究テーマから派生する研究としては、「大脳皮質構築機構の解明」と「脊髄伝導路形成機構の解明」があります。大脳皮質は、一見複雑な、しかし、実は美しく均整の取れた構造を持つ組織であり、これがどのようなメカニズムで構築されているかを明らかにすることは、我々の「知」の「座」である脳のなりたちを知るためだけではなく、その異常として現れるアルツハイマー病などの精神・認知疾患の分子病態を理解するためにも重要です。脳と身体を結ぶ情報の通り道である脊髄伝導路とあわせて、その構築・維持過程に関わる分子群の機能解析が研究テーマです。
3の研究テーマは、1の研究から派生して成長している研究です。アルツハイマー病に関係するAPPやAlcadeinは、キネシン-1モーターのカーゴ受容体として機能しています。モーターとカーゴを転結する受容体やアダプター分子が、どのような制御の下で働いているのか、また、受容体は、単にモーターと小胞を接続するだけでなく、モーター活性を積極的に制御する事が明らかになりつつあり、その分子機構の解明に取り組んでいます。
これら基礎研究が発展した応用研究として、アルツハイマー病の生化学的診断マーカーの開発や測定法の開発など応用研究も、世界中の研究室や企業と共同して、進めています。アルカデインの代謝産物p3-Alcの産生機構や体内動向、機能解析とアルツハイマー病との関連性を解析しています。
|