北海道大学大学院 薬学研究院 衛生化学研究室

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研究概要Research

5. がん免疫作用機構の解明と新たな抗がん剤の開発

Study 5: Study of mechanism in cancer immunity and development of new anti-cancer drugs.

我が国において、がんは現在の死因の第1位で、生涯のうちにがんにかかる可能性は2人に1人と言われています。がん治療は、手術、薬物治療(化学療法)、放射線治療が行われていました。最近、本庶佑先生らによる「がん免疫」でのノーベル賞受賞で注目される免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブなど)は、ブレーキとなるシグナルを遮断することで、免疫反応を持続させ、がんを排除する治療法として、第4のがん治療としての位置を確立しました。

一般にがん細胞はDNAの変異により正常細胞ががん化することで生じます。がん化に伴い、細胞周期制御の破綻や様々な細胞内シグナルの亢進あるいは抑制が起こり、その結果、異常な細胞増殖や浸潤・転移能の獲得が起こります。例えば発生や細胞増殖に関わる上皮成長因子受容体(EGFR)は乳がんや前立腺がんなど様々ながんでその変異が確認されており、変異によるEGFRシグナルの亢進はSTAT3やMAPキナーゼを介したがん細胞の増殖を促進するため、抗がん剤開発においては重要な標的となっています。

我々はアダプター分子であるSTAP-2がEGFRタンパク質の細胞内での安定性を高めることでEGFRシグナルの活性化を促進すること、またその下流分子であるSTAT3と複合体を形成することでSTAT3依存的な遺伝子発現を促進することを報告しており、STAP-2を中心としたシグナル伝達が、がん治療の新たな標的と考えられます。現在、我々は新規創薬を目標にSTAP-2タンパク質由来低分子ペプチドを用いたがん細胞増殖阻害効果の検討を行っています。また我々は、最近、抗がん剤であるトポテカンがDAMPsと呼ばれるがん免疫を活性化させる分子をがん細胞から放出させる能力があることを発見し、その分子機序の解析を通してがん免疫を活性化させる新規化合物の創出にも取り組んでいます。

English version: Under Construction