北海道大学大学院 薬学研究院 創薬科学研究教育センター 有機合成医薬学部門

研究内容

1. 生理活性天然物の合成

生理活性を持つ天然物は良い創薬リードとなります。アメリカで認可された薬の約半分近くが天然物をヒントに開発されたというデータもあります。そこで、薬物耐性が深刻な問題となっているがんや感染症等の治療薬のシーズとなる天然物を主な合成標的として設定し、まず有用な生理活性を持つ天然物の全合成を研究のスタートラインとして位置付け、更に構造活性相関を見据えた有機化学合成と、そのために必要な方法論の開発を行っています。

これまで、以下のような研究を進めてきました。

①ヌクレオシド系天然物

Caprazamycin類やmuraymycin類は、従来の抗菌薬とは異なる作用機序を有するヌクレオシド系天然物であり、現在問題となっている薬剤耐性菌に対する新規抗菌剤として期待されています。これらはヌクレオシド・糖・ペプチド・脂質を含む複雑な構造を有し、その全合成は達成されていませんでした。これらの天然物の誘導体合成を見据えた合成経路を開発すべく、鍵となるアシル基の隣接基関与を用いないβ-選択的なリボシル化反応を開発し、まずコア構造であるcaprazolの全合成を、さらにC-Hアミノ化反応と多成分連結反応を用いる事でmuraymycin D2の全合成を達成しました。さらに各種誘導体の合成と構造活性相関研究を展開して、薬剤耐性菌であるMRSAやVREにも有効な誘導体を見出しています。他にヌクレオシド系天然物herbicidin B、抗緑膿菌選択的活性を有するpacidamycin Dの全合成を達成しました。これらの天然物の全合成研究は、いずれも我々が世界に先駆けて達成したものです。

②ペプチド系天然物

強力な抗がん活性を有する環状ペプチドであるsandramycinやquinaldopeptin、プロテアソーム阻害剤であるsyringolin Aの全合成を、ジアステレオ選択的Ugi3成分反応を用いる事で達成しました。Syringolin Aについては、構造活性相関を検討する事で、プロテアソーム阻害活性とヒト骨髄腫細胞増殖抑制活性が大幅に増強した誘導体を見出しています。

Back