北海道大学大学院 薬学研究院 創薬科学研究教育センター 有機合成医薬学部門

研究内容

3. 核酸を用いた創薬化学

従来の低分子医薬品に加えて、抗体医薬品を中心とする高分子医薬品(バイオ医薬品)が臨床でも多く使用されるようになってきました。しかし、高分子医薬品のもう一つの柱(となるはず)である「核酸医薬品」については盛んに臨床試験が行われているものの、上市された医薬品は3品にとどまっています(2015年4月現在)。核酸医薬品は1)生体内の核酸分解酵素耐性、2)標的に対する熱的安定性、3)自然免疫応答による副作用の回避、などの多くの課題を有しています。これらの課題を解決するためには、ヌクレオシドの塩基部、糖部、リン酸部に化学修飾を加えた「人工核酸」を新たな医薬品素材として開発する必要があります。そのためには標的となる核酸やタンパク質の構造や性質を理解し、それに対する適切な「分子設計」と目的とする人工核酸を化学合成する「有機化学」が必須であります。

例えば当研究室で合成したアピオ核酸は天然型DNAの構造異性体となっていますが、高い核酸分解酵素耐性を有しながら、DNAポリメラーゼによる完全修飾伸長が可能な人工核酸であり、アプタマー等への展開が期待されます。

また、3価のアジドを有する試薬を用いて、DNA二本鎖を一挙にダンベル化する反応の開発にも成功しています。本試薬は反応後のダンベル型DNAにさらに修飾可能なアジド基を持たせることが出来るため、二本鎖核酸にラベルや標的化分子を結合するのに有用な反応です。

Back