小畠先生が亡くなられて35年になる。薬品物理学講座を1971年~1988年にわたり主宰された。還暦を迎えられたころのこと、「最終講義ではみんな自分の業績を話すが、俺は違う。過去ではなく将来を語りたい」とおっしゃっていた。3年も前から準備するのかと驚いたのだが、期待していたその講義を聴くことは叶わなかった。
筆者は1969年~1988年までの約20年間、阪大理学研究科から北大薬学研究科まで先生の指導を受けた。「芳香」に「小畠先生の思い出」を依頼されて、記憶を巡らせていると、先生との最初の出会いが浮かんで来た。講座配属されてすぐの頃だった。小畠先生に尋ねた。
「研究ってなんですか」。
「研究はおとぎ話だよ、一生かけて書き続けていくものだよ」。
本稿は小畠先生のおとぎ話である。公表された文献をたどり、先生が歩まれたすべての研究の足跡を探り、先生との思い出を織り交ぜて綴ったものである。(一部抜粋)
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