
日本では、2019年に抗生物質セファゾリンが大規模かつ長期間にわたって不足したことを契機に、「医薬品不足」が一気に社会問題として注目されるようになった。しかし、医薬品不足の問題は決して新しいものではなく、その端緒は少なくとも1990年代までさかのぼることができる。
筆者自身は、2000年頃から後発医薬品(ジェネリック医薬品)を中心とした医薬品の安定供給問題に関わってきた。厚生労働省による各種調査や関係会議に参画する中で、制度の議論だけでなく、現場で実際に起きている供給の歪みを間近に見てきたつもりである。そうした経験を経て、2024年3月末に神奈川県立保健福祉大学を退官したことを機に、医薬品不足に関する情報発信を目的とした一般社団法人「医薬政策企画 P-Cubed」を立ち上げた。
振り返れば、筆者は20年以上にわたり、医薬品不足をめぐる議論や調査に関わってきた。日本における医薬品供給問題について、一定の情報と経験を蓄積してきた一人であることは間違いないだろう。そこで本稿では、これまで必ずしも表に出てこなかった議論の舞台裏にも触れながら、医薬品不足をめぐるこれまでの経緯と問題点を整理してみたい。(一部抜粋)