
「エボラウイルス」と聞いてどのような印象をお持ちであろうか。現在進行形でアフリカにおいてブンディブギョウイルスによる流行が発生しており、ニュースや渡航時の検疫に関する注意喚起でその名を耳にした方もいるかもしれない。おそらく、多くの方にとっては、「遠いアフリカの国で流行する、怖いウイルス」というイメージが強いのではないであろうか。
筆者が初めてエボラウイルスの存在を知ったのは、1995年、薬学部修士課程2年のときであった。研究室の先輩から勧められて読んだのが、当時世界的なベストセラーとなっていたリチャード・プレストンのノンフィクション、『ホット・ゾーン』である。
ポスドク時代にウイルス研究の面白さに引き込まれつつも、かつて本を読んで恐れたエボラウイルスを自ら研究するなどとは夢にも思っていなかった。エボラウイルス研究に携わる機会を得て、その研究対象としての圧倒的な面白さに夢中になった。それまで、危険を冒してまで研究する科学者の気持ちが理解できない、と思っていた自分が、まさかエボラウイルスの研究者になるとは、人生とは面白いものである。
本連載では2回にわたり、エボラウイルスに関する学術的背景や予防・治療薬開発の現状に加え、我々の主要な研究内容、そして現在正式稼働に向けて準備を進めている長崎大学BSL-4施設の概要と展望について紹介する。
奇しくも、今年(2026年)は1976年にエボラウイルスが初めて発見されてから50周年という節目の年にあたる。本稿を通じて、研究対象としてのエボラウイルスの魅力を同窓の皆様と共有し、このウイルスへの関心を少しでも深めていただければ幸いである。(一部抜粋)