皮膚は体の最外郭に位置する体内で最も大きな重量(皮下組織を含めると体重の約16%)を持つ組織である。Eliasらによって提唱された「モルタルブロックモデル(Mortar & Brick model)」に代表されるように最外層の角層による物理的バリア機能が長年にわたり研究の主な対象とされてきたが、1980年代後半にサイトカインや成長因子が表皮細胞から産生されることが明らかになって以来、皮膚の生化学的研究が盛んにおこなわれるようになった。化粧品業界でもEvidence Based Medicine(EBM:科学的根拠に基づいた医療)に追随してEBC = Evidence Based Cosmeticsが1990年代初めに提唱され、作用メカニズムを含めた効能効果に関する研究が盛んになった。本稿では皮膚、特に表皮層の生物学的特徴と皮膚バリア機能に関与する細胞間脂質セラミド をターゲットとした最近の研究を紹介する。