この事業について

 

血管ナノ医療の実現に向けて

  • コンパニオン診断に基づく血管を標的とするがん個別化医療の実現
  • メタボリック症候群を根治する革新的ナノ医療の実現
  • 脳転移・脳神経疾患を制御する血管脳関門突破技術の創生
  • 次世代研究者の育成

 

本事業の経緯

本プロジェクトは、2009年より北大初の部局横断プロジェクトとして、薬学研究院(未来創剤学研究室)と歯学研究科(血管生物学研究室)との連携による血管を標的とした革新的医薬分子送達法の確立を目指して始まりました。

当初5年限りのプロジェクト研究でありましたが、予想を超える研究成果と若手研究者の育成に成功し、2014年から第二期として継続する事となりました。2018年8月には、FDAが世界初となるsiRNAナノ医薬品ONPATTROTMを認可し、核酸ナノ医薬の時代が幕開けとなりました。

実用化を阻む「死の谷」を超えるために、北大独自のマイクロ流路技術を有する工学研究院(生物計測化学研究室)が新たに参画することとなり、血管を標的とするナノ医療の実用化を明確な目標として設定し、この2019年4月より「血管を標的とするナノ医療の実装 ~Personalized Nanomedicineの北大ブランド化~」が始まりました。

 

本事業の概要

医薬品開発の分野では、低分子医薬から抗体医薬へ、次世代医薬の核酸医薬へ、というパラダイムシフトが起きており、2018年のパティシランの認可により核酸医薬の扉が開いたと言えます。本取組は、血管の多様性の理解に基づいた診断薬と本学発の「MEND」を用いて血管を標的とする組織選択的な核酸ナノ医療を統合することで、がん、メタボリック症候群、脳転移・脳神経疾患に対応した個別化ナノ医療の実現を最終目標とし、日本発の革新的医薬の創出、医療イノベーションと人類の健康に貢献するものであります。

 

本事業の目的

本取組は平成21年度より開始した最先端異分野融合研究「血管を標的とする革新的医薬分子送達法の基盤技術の確立」、平成26年度から「血管を標的とするナノ医療の実用化」と継続して研究成果を積み重ねてきており、これまでの研究で、血管には正常と疾患における違いが存在し、疾患の悪性度・進行状況に応じて多様な分子を発現していることを見出すことができました。また、臓器別にも血管の多様性があり、組織選択的な血管を標的とする医薬分子送達システム「MEND(多機能性エンベロープ型ナノ構造体)」の開発に成功しています。

医薬品開発の分野においては、低分子医薬から抗体医薬へ、次世代医薬の核酸医薬へ、というパラダイムシフトが起きています。このような状況下、全身投与型 siRNA 医薬品のパティシランが核酸医薬として2018年8月に米国で認可されました。我々が開発してきた血管を標的とする「MEND」は、組織選択的に血管を認識し標的化することでアクティブに核酸医薬を作用部位へ送達するシステムであり、パティシランの性能を上回るものであります。

【血管を標的とするナノ構造体による組織選択的な医薬分子送達システム】

本取組では、血管の多様性の理解に基づいた診断薬と血管を標的とする組織選択的な核酸ナノ医療を統合するために、本学工学院で独自に開発されたマイクロ流路ナノテクノロジーと連携することで実用化を促進し、がん、メタボリック症候群、脳転移・脳神経疾患に対応した個別化ナノ医療の実現を最終目標としております。

本取組により、本学発、日本発の革新的医薬を創出し、医療イノベーションと人類の健康に貢献する事を目指します。

 

本事業の組織

本事業は「薬学研究院」「歯学研究院」「工学研究院」をコアとして、北大病院、医学研究院、遺伝子病制御研究所、産学地域推進協働機構、北海道臨床開発機構と連携し、実用化を進めてまいります。

【実用化を目指す組織体制図】