歯学研究院 研究内容

血管グループ

血管制御による疾患治療の実現

血管は国民病のがん、心疾患、脳血管疾患いずれにも深く関与しており、疾患の発症、進展に深く関与しているため、血管を制御することにより疾患の治療が可能である。特にがんにおいて血管新生はその進展・転移に不可欠であるため、血管の内側を構成する血管内皮細胞は新たながん治療法、血管新生阻害剤の重要な標的である。しかし、こうした血管を標的とした現在の治療薬にはいくつかの課題があることも明らかになってきた。例えば、正常血管への傷害による副作用や薬剤耐性の問題である。さらにコンパニオン診断薬が存在しないことから、治療時期や投与期間、適応患者の選択が困難となっており、新たな血管新生阻害戦略の構築が必要性が認識されている。

我々はこれまで腫瘍血管内皮細胞(Tumor endothelial cell: TEC)を分離培養し、それらが正常血管内皮細胞(Normal endothelial cell: NEC)と異なることを明らかにしてきた.また、これまでの連携プロジェクトにおいてTECの新たな生物像(薬剤耐性、多様性【図1】、幹細胞性、がんの転移誘導など)を発見・報告してきた。

【図1】腫瘍血管内皮の多様性を発見

2019年度に開始された本プロジェクトにおいては、 1)TECマーカーを標的とした診断・治療法開発【図2】、2)TEC とがん微小環境の関係解明【図3】、3)薬剤耐性や転移などがんの悪性化におけるTECの分子機構の解明、4)癌免疫におけるTECマーカーの関与、について基礎研究を進める。さらにこれまでのTEC に関する基礎研究成果を生かし、他の臓器(肝臓、肺、膵臓、脂肪、脳など)における血管の特異性や、がんや他の代謝性疾患、神経疾患などにおいても血管の役割、特異性を解明する。

【図2】腫瘍血管に特異な治療薬の開発

【図3】がん微小環境の関係解明

 

一方、われわれの教室は病理をベースに臨床系の複数の医師、研究者と共同で研究を進めてきた。今期のプロジェクトにおいてはこうした橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)をさらに推進し、その成果を薬学研究院原島研、工学研究院渡慶次研と連携し血管標的ナノ医薬の開発・実用化につなげる。

キーワード:血管内皮細胞、がん、血管新生、血管新生阻害療法、微小環境、病理学