脂質の生合成・代謝に限らず,生体内の殆ど全ての化学反応は酵素により触媒されている。 各反応を触媒する酵素の遺伝子を同定することはその後の生化学,分子生物学,遺伝学,生理学,病態解析に極めて重要である。例えば,遺伝子欠損体の作成はその遺伝子(あるいは遺伝子産物であるタンパク質/酵素)およびその酵素のプロダクト(生化学研究室の場合は脂質分子)の生理機能や関連する疾患の原因の解明につながる。また,リコンビナントの作成は,酵素の大量発現・精製とin vitro における解析などに有用である。
生化学研究室(旧生体機能化学研究室を含む)ではこれまでに数多くのセラミド/スフィンゴ脂質関連遺伝子を同定してきた。これらは,セラミド/スフィンゴ脂質の合成あるいは修飾,長鎖塩基/長鎖塩基1-リン酸の分解(詳細は「2. 長鎖塩基の代謝と脂肪酸α酸化経路の解明」を参照),極長鎖脂肪酸伸長(詳細は「3. 極長鎖脂肪酸の産生,生理機能,病態」を参照),アシルセラミド合成(詳細は「4. セラミドによる皮膚バリア形成」を参照)において働く哺乳類 16 遺伝子(ELOVL1,HACD1/2,KDSR,CERS3/6,FADS3,CYP4F22,FATP4,PNPLA1,ABHD5,SGPP2,ALDH3A2/B2,TECR,HACL2)と酵母 6 遺伝子(CSH1,RSB1,HFD1,FAA1/4,MPO1)である。図4にセラミド代謝経路と生化学研究室で同定した遺伝子群(赤,哺乳類遺伝子;青,酵母遺伝子)を示す。
