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平成18年度 自己・外部点検評価

1.まえがき

大学の教育・研究活動に対する自己点検と第三者による外部評価は、大学の活性化を図るために様々な形態で実施されている。
北海道大学薬学部では、全国の国公立大学薬学部に先駆けて、平成3年度から6年度までの4年間の教育・研究活動に関し学外審査委員による点検評価を平成7年3月に実施した。続いて、平成7年度から9年度までの3年間の教育・研究に関する自己点検・外部評価を平成10年10月に実施し、さらに、平成10年度から12年度までの3年間の教育・研究に関する自己点検・外部評価を平成13年12月に実施し、報告書を刊行した。今回は、平成13年度から17年度までの5年間の自己点検・外部評価を行い、ここに本報告書を刊行した。

前回の点検評価以後、国立大学をめぐる状況が大きく変わった。この間、当薬学研究科・薬学部も大きな変化を経験した。年を追って見ると、第1に、平成14年度に、当薬学研究科が参加している21世紀COEプログラムが採択されたこと、第2に、平成16年度からの法人化に向けて当研究科・学部の中期計画・中期目標を作成し、新しい体制に備えたこと、第3に、薬学教育6年制の施行に向けて学部改組構想案を作成し、平成18年度から4年制・6年制の2学科併置を行ったこと、そして、第4に、北海道大学における大学院改革の方針(研究院・学院構想)に沿って当薬学研究科改組構想案を作成し、平成18年度から薬学研究科を薬学研究院・先端生命科学研究院・生命科学院に改組したことがあげられる。
21世紀COEプログラムと大学院改組の取り組みは、異分野の研究者との有機的連携を図り、新しい学問体系を創出するための、高度で先端的・萌芽的研究を推進し、かつ、融合的・統合的大学院教育を行うことを目指している。21世紀COEプログラムは平成18年度に最終年度を迎え、一方、新しい大学院制度は平成18年度からスタートした。今後の一層の発展を目指して大学院の研究・教育について点検総括を行った。

一方、医療現場で実践的能力を発揮できる指導的薬剤師の養成への期待が高まり、平成18年度から薬学教育6年制が施行された。当薬学部では、第一線で活躍できる生命科学・創薬科学研究者の養成を目指す4年制学科(薬科学科)と研究心を持った先導的薬剤師及び医療薬学研究者の養成を目指す6年制学科(薬学科)の併置を行った。両学科における人材養成の充実を目指して点検総括を行った。

今回、激動の5年間(平成13年度から17年度まで)の管理運営・教育活動・研究活動について自己点検・評価し、その結果を取りまとめた。さらに、生命科学、創薬科学、医療薬学の各領域で先導的な役割を果たしておられる5名の方々に外部点検評価委員をお願いし、平成18年10月2日に来学頂き、当研究院において5時間半にわたる面談、視察を行なって頂いた。その後、各外部点検評価委員のコメントを外部点検評価委員長に取りまとめをお願いし、書面にて貴重な種々のコメントを頂いた。ご多忙の中、面談の席で、また、書面にて評価を頂いた外部点検評価委員長をはじめ外部点検評価委員の諸先生方に厚く御礼申し上げます。

この自己点検・外部評価において、教育・研究活動の一層の高度化・活性化が図られるか否かを検証するとともに、外部点検評価委員から頂いた評価を真摯に受けとめ、今後、当研究院・学部の教育・研究の充実・活性化に向けてさらに励む所存である。

北海道大学大学院薬学研究院
点検評価委員会委員長 横沢 英良

2. 外部点検評価実施要領

1. 日時
平成18年10月2日(月) 10:00~15:30

2. 場所
北海道大学大学院薬学研究院会議室

3. 内容
(1)研究院長挨拶
(2)概要説明(研究院・学部全体、各研究室)・質疑
(3)質疑
(4)施設見学
(5)総括討論

4. 外部点検評価項目
(1)管理運営・組織機構及び施設設備
・管理運営体制
・教員人事
・施設、設備等
(2)教育活動【学部教育】
・カリキュラムの編成
・薬学教育の強化・充実
・教育指導等
(3)教育活動【大学院教育】
・カリキュラムの編成
・大学院での研究指導
・学位授与と論文指導等
(4)研究活動
・各研究室の研究活動の現状と特色等
(5)社会的活動・国際交流
・生涯教育特別講座
・国際シンポジウム等の主催・参加状況等

5. 外部点検評価資料
(1)自己点検評価報告書
(2)平成18年度改組後の教育研究体制
(3)生命科学の最先端へ ・・・ 学部紹介パンフレット
(4)生命科学をリードする薬学研究科 ・・・ 大学院紹介パンフレット
(5)大学院生命科学院紹介パンフレット
(6)平成17年度薬学部学生便覧
(7)   〃    講義要項(全学教育科目)
(8)   〃    講義要項(専門科目)
(9)平成18年度薬学部学生便覧・講義要項(18年度専門科目)
(10)平成17年度大学院薬学研究科学生便覧・講義要項
(11)    〃        修士課程学生募集要項
(12)    〃        博士後期課程学生募集要項
(13)平成18年度大学院生命科学院学生便覧
(14)    〃        シラバス
(15)    〃        修士課程学生募集要項
(16)    〃        博士後期課程学生募集要項

3. 外部点検評価委員名簿(敬称略:五十音順)

北 泰行 大阪大学大学院薬学研究科・教授
嶋田 一夫 東京大学大学院薬学系研究科・教授
中野 洋文 協和発酵株式会社・リサーチフェロー
西島 正弘 国立医薬品食品衛生研究所・所長
橋田 充(委員長) 京都大学大学院薬学研究科・教授

4. 外部点検評価委員からの評価及び提言(外部点検評価報告)

  1. 管理運営・組織機構及び施設設備
  2. 教育活動(学部教育)
  3. 教育活動(大学院教育)
  4. 研究活動
  5. 社会的活動・国際交流
  6. 総合評価

1. 管理運営・組織機構及び施設設備

(管理運営体制、教員人事、施設・設備の整備等)

組織全体として、大学院、学部の体制変更などダイナミックな運営を行っている。研究・教育の高度化のためにはこのような改革は重要であろう。改革の多くはまだ端緒についたところであり、今後実際に改革を推進する中で、不都合があれば弾力的に対応することも重要である。

項目ごとに評価結果を示すと、“管理運営体制”は、円滑に構築され適切である。本学は平成10年に大学院重点化され、平成14年に「ナノとバイオを融合する新生命科学拠点」として21世紀COEプログラムが採択されたのち、さらに平成18年度に4年制・6年制2学科が併置されたように順調に組織改革が行われている。平成18年度に大学院教育の充実を目的として、薬学研究科を教員組織と大学院教育組織に分離した「薬学研究院」及び「生命科学院」がスタートしたことは特筆すべき事項と考える。また、新しい組織のもとに研究科・学部の運営が首尾よく行われつつあることも窺われる。

指摘事項、意見としては、以下のものがあった。

  1. 比較的規模が小さくかつ異分野の研究者から構成されている本部局のような組織では、管理運営体制を合理的かつ弾力的に構築することが望ましく、研究科長、専攻長等のリーダーシップを制度上より明確化することも考慮されて良いと考える。
  2. 各種委員会は基本的に良く機能しているものと判断される。
  3. 大きな組織改革にあたり、各役職の任期等は見直しても良いと感じる。

“教員人事”に関しては、教授陣の過半数が他大学出身者で占められ、かつ本学の助教授や助手が他大学の教授や助教授として数多く転出していることから、流動性の拡大に充分な努力が払われているものと評価される。しかし、これ迄本研究科の特長でもあった女性教員(特に女性教授)の割合が減少しているのは残念であり、これは点検評価委員に共通した感想であった。有能な女性研究者を発掘し、採用する努力が望まれる。

その他の意見、指摘事項として、

  1. 研究分野についても良くバランスがとれている。
  2. 北海道大学全体では、ポイント制を用いて女性採用を促しているとのことであり、積極的に優秀な女性の採用も考慮されたい。
  3. そろそろ教授の人事に、第三者の専門家の意見を求めることも考えてもよい時代になったと考える。
  4. ポストドクが20人ほど在籍するが、今後はさらにその数を増し、さらに外国人も採用し、国際化を図って欲しい。
  5. 教員人事に関して、おおむね回転が速いケースが見受けられるが、一方停滞しているところもあるように思われ、長い目で見れば、人事の停滞は研究科の活力低下に繋がる問題であるので、全体として取り組むことが望まれる。

等があった。

“施設整備”に関しては、平成9年に改築された当初から指摘されていることであると思うが、その後の大学院重点化による大学院生の増加にも拘わらず、建物面積は増加していないので、絶対的に不足し、安全面、健康上からも環境は極めて良くない。建物・施設は欧米やアジアの主要な大学と比較しても劣っており、本研究科・学部の研究教育活動レベルからみると、最低2倍の広さと内容の充実が不可欠である。施設も少ない上に狭く、講義室、実験室、さらには諸々のアカウンタビリティのための空間として、ファカルティクラブや学生と教員が話し合う空間等が必要である。大型機器は比較的揃っているが、それでもまだ十分とは言えない。研究科として大型施設・設備を擁して今後の展開が期待されるが、その安定的な維持も問題となる可能性もあり、大学全体として維持するなどの施策が必要かもしれない。

具体的な施設整備の方向性として、下記のような意見があった。

  1. 実験室と居室(勉強机)との分離について考慮すべきである。
  2. 実験室と居室の分離、廊下からの機器の撤去のためにも、研究室、学生実験室のスペース拡大が必要である。
  3. 学生実験棟、講義棟を現在の建物の外に移す。
  4. 研究室の場所を教授が変わるときなどの機会に5-10年に一度移動させることにより、遊休機器などの整理を促進する。
  5. 大型施設・設備を擁して今後の展開が期待されるが、その安定的な維持も問題となる可能性もあり、大学全体として維持するなどの施策も必要かも知れない。
  6. 附属薬用植物園は、種類も広さもかなり充実してよく整備されていた。
  7. 6年制薬学教育の実施に向けた施設整備を早急に計画する必要があり、全学レベルでの理解、支援を得る努力を是非続けられたい。

2. 教育活動【学部教育】

(カリキュラムの編成、薬学教育の強化・充実、教育指導等)

平成13年度から北海道大学の教育理念に立脚した教科目改革を行い、独自性の高い授業が行われており、評価できる。また自主ゼミを行うなど、学生を主体的に勉学させる工夫も行い、教育の充実に努力が払われている。薬剤師国家試験において好成績を挙げていることも、学部教育が充実していることの証左であろう。平成18年度からは、4年制の薬科学科と6年制の薬学科の2学科制に改組され、それぞれのカリキュラムが編成・整備されつつあるが、まだ方針は固まっていないようであり、これからの議論が重要と思われる。

企業においては、入社した北海道大学の薬学出身者はバランスの取れた教育を受けていて評価が高い。また本人たちの大学時代の教育に対する満足度も高いようである。

具体的な教育内容、手法に関しては、学部教育の中で、学生が自分の頭で考えるようにするために、質疑応答形式や演習形式を取り入れたり、また1、2年次で課外に自主ゼミを行い、生命科学・創薬科学の進歩を認識させ興味を持たせる努力をしていることは評価される。特に、4年制学部教育において1、2年次から有機化学、物理化学、生物学それに語学などの基礎学問を十分に修得させ、これらの学問が将来の創薬研究に極めて重要であることを早い時点に理解させることは重要であり、くさび型方式による教育はこうした視点から極めて大切である。また、薬学の大学院教育が重点化後、他の理系研究科と講義を共通化したり、単位の互換性を認めたりしていることを含め、特に学部教育では、薬学の特長である有機化学、物理化学、薬理学、薬剤学、生化学、分子生物学、天然物化学、創薬化学、毒性学、薬物動態学、分析化学など巾広く横断化した講義をこれ迄以上にお互いに関係づけて修得させ、他の理系学部と異なる人材を養成する必要がある。

一方、6年制の薬学教育に関しては、薬剤師国家試験に合格するだけではなく、医療現場において問題発見から解決までの能力を持った、リーダーとして活躍できる人材を育成する専門教育、特に今後国際的にも活躍し得る人材をどのように世の中に送り出すか、が重要な問題であり、これを学部教育から連続して考えることが大きな課題として残っている。卒業論文を12ヶ月とし、現行より期間延長したことは、評価できる。

4年制と6年制薬学教育の並置に基づく新しい教育システムに対しては、以下の意見、提言もあった。

  1. 将来研究者になることを希望する学生にも、これまで薬剤師国家試験を受ける必要性から課せられていたと思われる有機化学から分子生物学までの幅広い基礎教育が失われないことを希望する。
  2. 薬学科における病院・薬局実習の準備状況はまだ充分ではないと感じられた。
  3. 学部学生が実験に興味を持つように、実験室などが予備に確保できればと思う。
  4. 6年制教育のコアカリキュラムで求められる早期体験学習等の体制の整備をさらに進める必要がある。
  5. 学生による授業評価を教育改善へ生かすために、教育へのフィードバックのシステムを明確化することも考える必要がある。

3. 教育活動【大学院教育】

(カリキュラムの編成、大学院での研究指導、学位授与と論文指導等)

平成18年度より大学院教育の充実を目的として、生命科学院がスタートした事は特筆に値する。本院には理、医及び農学研究科、遺伝子病制御及び電子科学研究所それに大学病院などの一部教員と平成18年度に新設された先端生命科学研究院の教員と共に薬学研究科の教員が参画している。本院は生命科学に関する学部の卒業生を対象とし、これに連動して、薬学研究科の教員組織を2部門3基幹分野からなる「薬学研究院」に改組している。

生命科学院では、独自の履修モデル(例えば、バイオ関連分子科学技術者、化学系創薬研究者、生命系創薬研究者、医療系技術者などに対するもの)を設け、学生向けにシラバスが体系づけて組まれており、さらに大学院生参加型授業を採り入れ、カリキュラムの大きな改善が見られる。また、国際性を意識して、修士課程の講義に英語論文の書き方を取り入れているのは素晴らしい試みである。

大学院の研究成果は、インパクトファクターの高い英文雑誌への投稿が多く、活発な研究指導と論文指導が行われていることが窺える。しかし、研究室間に研究業績、競争的資金の獲得や学術振興会特別研究員の数などで質、量共に大きな差が見られる。競争的資金の多い本研究科としては、真の国際化を目指すために学振の海外特別研究員なども、もっと積極的に受け入れるような努力が必要と思われる。

また、我国においては現在大学院制度、特に博士号の位置づけについて、活発な議論が行われている。日本を代表する薬学領域の基幹大学として、新しい制度、組織体制における薬学を専攻する博士研究者の育成について、明確なビジョンを提示することは、本研究院のリーダーシップを明確に示すためにも重要と考える。

上記に加え、大学院教育に関しては、以下の指摘事項、意見があった。

  1. 大学院生の充足率は十分であるが、博士課程の院生と外国人院生についてはやや人数が少ないようである。
  2. 研究科の枠を超えた大学院共通講義や大学院学生の主体的力量向上のための工夫が行われ、充実した大学院教育が行われているものと思われた。
  3. 外国人教師による論文書き指導がなされており、極めて適切な教育・指導である。
  4. 教員組織である「薬学研究院」と大学院教育組織である「生命科学院」に分離し、薬学研究科の大学院生を学際的な「生命科学院」の所属とし、他学部院生とともに学ばせるシステムはユニークであり、その教育成果を期待する。
  5. 生命科学院として再編された後もこれまでの薬学部の特徴であるバランスの取れた幅広い分野の教育が持続されるよう希望する。
  6. 大学院教育組織と教員組織の間で、特に学生の側から混乱が生じないように、配慮が必要と考える。薬学としてのアイデンティティーは、引き続き尊重されるべきと考える。
  7. 製薬企業の採用に責任がある問題であるが、修士1年生の企業への就職活動は少なくとも入学した翌年の1月以降にすべきである。本人が研究に適性があるのか別の仕事の方が向いているか指導教官とともに考える時期が必要である。
  8. 博士課程に残る学生の質に疑問がある場合が指摘されていたが、これは一学部の課題を超えた問題である。
  9. 将来的には論文博士の制度は縮小され、企業で働く研究者は博士課程修了後あるいはポスドク経験後、即戦力として就職することが理想である。日本の大学院生の経済的負担を軽減する制度、基盤とそれに値しない大学院生は早めに別の道を求めて転進することが求められる。
  10. 既に企業で活躍している研究者に論文博士の制度は細くても残していただきたいが、企業としては将来、研究の中核と期待する人を1-2年大学との共同研究に派遣することも必要と思われる。
  11. 大学院の修士課程在学生が定員をはるかに超えていることは分かるが、資料の表は、定員と現員の他に、志望者数、出身学部(薬学部か他学部か)、出身地方(道内か道外か)等を加えた資料とする方が望ましい。今後、全国的に、また他学部からどれ位の人数が入学しているのかを知り分析することが重要である。

4. 研究活動

(各研究室の研究活動の現状と特色等)

各研究室からの発表論文リストから判断すると研究業績は良好であり、極めて特徴のある質の高い研究を活発に展開されている。研究領域のバランスもよく、このような体制が続くことが薬学の発展につながると考える。また、評価当日に紹介された研究発表も、いずれも優れていた。

競争的研究費の獲得状況は良好であると思う。ただし、平成17年度の文科省科研費が減少していることが気になる。特許取得状況は普通のレベルと判断する。今後は、収入に結びつける努力が必要であろう。TLOの整備も今後の重要な課題と考える。

競争的研究費の獲得状況を具体的に眺めると、大型研究プロジェクトが数多く採択され、21世紀COEプログラムに選定されるなど、研究活動は質、量共に十分である。教員の科研費、他省庁研究費、委託研究費は非常に多く、特に特定領域研究、基盤(S)、基盤(A)、などの大型研究費の受け入れは、同規模の大学では最高クラスである。しかし委任経理金や民間等との共同研究、さらに大学院生の学振特別研究費等がやや少ない。民間等との共同研究受け入れをさらに活発化されたい。教員の学術に関する受賞状況は良好であるが、教授に比して、助教授、助手層の受賞がやや少ない。国際交流として国際会議等への出席も年々増加し、研究活動は非常に活発だが、さらに助教授、助手、博士課程学生など若手研究者の研究活動の活性化が必要である。

研究活動に対しては、上記に加え、以下のような意見があった。

  1. 制度改革の果実としての、他領域との融合研究の活発化が大いに期待される。
  2. バイオ特に医薬分野の特許は国内だけの出願では価値が乏しい。新規性と進歩性が高い研究成果の特許戦略についてはTLO、知的財産本部も含めて的確に進めていただきたい。
  3. 今回、プレゼンされた先生方の研究成果は製薬企業から見ても興味深い内容が多かった。しかし、ご自身の研究内容の発表のみで世界の中での位置づけ、ライバルなどベンチマークがない点の改善を希望する。知的財産の判断のためにも世界の中での位置づけをお願いしたい。
  4. ポストゲノムの研究分野として、Chemical GenomicsあるいはChemical Biologyという領域でのアカデミアでの薬剤探索が重要視されている。日本でも70年代まではアカデミアでの薬剤探索は活発に行われていたが、80年代以降、論文中心の評価、志向が強まりかつての基盤は失われた。薬学部には、卒業生との交流も含め、アカデミアでの薬剤探索の再興のための活性化が期待されている。

5. 社会的活動・国際交流

(生涯教育特別講座、国際シンポジウム等の主催・参加状況等)

生涯教育特別講座が毎年行われているが、年々参加者が減少しているのが気になるところである。参加者が積極的に質疑応答に参加し得るフォーラムや討論会を企画し、時間も延長し、土曜の半日の開講も視野に入れてはどうであろうか。

オープンユニバーシティが毎年夏に実施され、一日違いで体験入学も行い、道内外から多くの参加が見られるのは素晴らしいことである。体験入学の内容の詳細は明らかでないが、大学の研究概要や紹介を正しく理解してもらうために、ポスターやパネルを準備し、若い教員や大学院生を動員して質疑応答を十分に行い、大学の薬学部では何をするのかを正しく分かり易く伝えることが大切である。国際交流としては、国際会議への参加や、国際学会・シンポジウムの主催が年々増加しており、国際化に努力していることが窺える。しかし、外国人留学生の受け入れがやや少なく、支援体制に検討すべき課題が多く残されているように思われる。今後、真に世界と競争しうるトップリーダーを育成する研究機関になるためには、外国からの学振による博士研究員や、外部獲得資金などにより、外国からの博士研究員の受け入れ体制と支援体制の充実を図る必要がある。

社会的活動・国際交流に関しては、以下の点に関しても留意されることが望まれる。

  1. いろいろな研究領域において国際シンポジウムの開催を行い、情報の発信及び学生への啓蒙を積極的に行っていると感じた。
  2. 企業からみると国内での国際シンポジウムの数は多いが単発的で特徴があまりない。北大の地理的利点も生かした継続的な質の高いシンポジウムを期待する。
  3. シンガポール、インド、中国などアジアとの交流の促進が望まれる。
  4. 市民向け講座も必要であろう。
  5. 高校との連携も積極的に行ってほしい。

6. 総合評価

自己点検評価報告書、ヒアリング、実施見学などを総合して、管理運営、組織、教育活動、研究活動、社会的活動は、現行の状況下では適切な努力がなされ大きな成果を上げていると判断できる。すなわち、平成13年度から平成17年度の5ヵ年の間、21世紀COEプログラム採択、大学法人化、薬学教育6年制への準備、大学院の改革など、大きな課題に適切に対処してきたと評価する。これらの作業の中、研究・教育、研究費の獲得も順調に行われた。企業サイドから総合的に見ても、北大薬学部はバランスの取れた教育を行ってきており評価は高い。

この5年間に計画され、平成18年度から実施される新しい6年制、大学院の教育・研究はスタートしたばかりであり、どのように展開されるか不明である。しかし、これからの5年間は極めて重要な時期であり、ユニークな北大薬学作りも含め、着実に大きな成果を得ることを期待する。

上記は点検評価委員の間でほぼ共通した評価であったが、これに加え、我国の高等教育に対する大局的立場からの意見として、以下の意見があった。

  1. これは北大の評価としては、報告することではないかもしれないが、敢えて意見を述べると、国が選出した大学を重点化して大学院生の数を増やしたにも拘わらず、スペースはそのままで、教員の数も反対に削減しているのは間違っていると考える。ヨーロッパの大学がかつての高い競争力を失いつつあるのは、政府による研究補助金の少なさが一因であると指摘されている。日本も同じ轍を踏まないよう、政府がもっと支援する必要がある。近年、大型の競争的資金は、以前に較べて格段に多くなったが、今後は、すぐには社会への還元の期待が少なくても、優れた基礎研究に研究補助金を出し、大学の運営交付金を増額し、大学の入学者を増やし、思考力や活力のある学生を育てる、すなわち人を育てる事を目指して欲しい。例えば、基礎研究への支援方法としては、現在の日本学術振興会の配分額を単に今の2-3倍にするのも良い方策のひとつである。
    また、以下の指摘、意見も総合評価の一部として加えたい。
  2. 今後の重点分野であるChemical GenomicsあるいはChemical Biologyの領域で重要な拠点になるよう薬学部の蓄積を生かして新たな取り組みを強化していただきたい。
  3. 北大は敷地が広い。研究環境、スペースの改善に一部の施設を現建物以外に移せないか検討していただきたい。
  4. 総合的に見てよい研究・教育を行っていると判断する。薬学の場合、基礎と実学のバランスが難しく、ひとたびそれが崩れると元に戻すのに膨大な時間がかかる。この状態を維持していくことが望まれる。
  5. 今後さらに創薬研究を追求するための仕組みとして、トランスレーショナル研究は有効な方策と考えられる。一方、薬学教育の面からは引き続き地域コミュニティーに対する優秀な医療人の輩出も、本学の重要な責務であろう。こうした観点より、医学研究科との連携の強化も明確なビジョンのもとに進められるべきであろう。
  6. 改善事項として、あえてあげるならば、1項で指摘した、人事の更なる活発化と施設維持の点であろう。今後の更なる発展に期待する。
  7. 今後は外部評価委員として、外国で第一線の教授として活躍されている日本人の先生に、外国の大学との良悪を比較して貰っても良いように思う。

5. 外部点検評価及び提言を受けて

5名の外部点検評価委員から頂いたご意見とご提言(外部点検評価委員長に取りまとめをお願いした)を受けて、当研究院・学部の対応、今後の取り組みについて以下に記したい。

1. 管理運営・組織機構及び施設設備について

組織全体としてダイナミックな運営を行っているというコメントを頂いた。ご指摘のように、大学院、学部の改組等の改革はまだ端緒についたばかりであり、今後も積極的にかつ柔軟に改革を推進する所存である。

管理運営体制については、円滑に構築され適切であり、また、改革後も新しい組織のもとに運営が首尾よく行われつつあるとのコメントを頂いた。「研究科長、専攻長等のリーダーシップを制度上より明確化することも考慮されて良い」や、「大きな組織改革にあたり、各役職の任期等は見直しても良い」とのご提言については、前向きに検討したい。

教員人事については、教授陣の過半数が他大学出身者で占められていることや、本研究科の助教授や助手が他大学の教授や助教授として数多く転出していることから、流動性の拡大に充分な努力が払われているというコメントを頂いた。一方、「これ迄の本研究科の特長でもあった女性教員(特に女性教授)の割合が減少している」とのご指摘があった。女性研究者の採用の促進は北海道大学全体の方針であり、有能な女性研究者の発掘と採用に向けて全力を尽くす所存である。また、「教員人事に関して、おおむね回転が速いケースが見受けられるが、一方停滞しているところもあるように思われる」とのご指摘については、研究院全体の問題として教員人事の促進に取り組みたいと考える。さらに、ポストドクの増員や外国人の採用も視野に入れて、教員人事を進めたい。

施設整備については、「絶対的に不足し、安全面、健康上からも環境は極めて良くない」、「本研究科・学部の研究教育活動レベルからみると、最低2倍の広さと内容の充実が不可欠である」、「施設も少ない上に狭く、講義室、実験室、さらには諸々のアカウンタビリティのための空間として、ファカルティクラブや学生と教員が話し合う空間等が必要である」など、施設が狭隘であるとのコメントを頂いた。ご指摘のように、大学院重点化以降の大学院学生の増加や、6年制薬学教育の実施に向けた施設の確保に対処するために、講義棟の新築は緊急に必要であり、現在、大学当局の理解と支援を得るために全力を尽くしている。また、「実験室と居室(勉強机)との分離」、「廊下からの機器の撤去」、「遊休機器の整理」、「大型施設・設備の安定的な維持」などのご提言については、実現に向けて努力したい。

2. 教育活動【学部教育】について

学部教育全般については、「独自性の高い授業が行われている」、「自主ゼミを行うなど、学生を主体的に勉学させる工夫も行い、教育の充実に努力が払われている」、「薬剤師国家試験において好成績を挙げている」など、学部教育が充実しているとのコメントを頂いた。また、「企業において、入社した北海道大学の薬学出身者はバランスの取れた教育を受けていて評価が高い」とのコメントも頂いた。一方、平成18年度からスタートした4年制と6年制の2学科制の改組については、ご指摘のように対応が遅れている面があり、2学科併置の意義やカリキュラムの内容について議論をさらに深め、両学科における人材養成の充実に向けて全力を尽くす所存である。

具体的な教育内容、手法については、努力しているとのコメントを頂いた。質疑応答形式や演習形式の採用、自主ゼミの実施、基礎学問の重視など、これまで行ってきた教育指針・内容を確認しさらにそれを推進する努力をしたいと考える。また、「薬学の特長である有機化学、物理化学、薬理学、薬剤学、生化学、分子生物学、天然物化学、創薬化学、毒性学、薬物動態学、分析化学など巾広く横断化した講義をこれ迄以上にお互いに関係づけて修得させ、他の理系学部と異なる人材を養成する必要がある」とのご提言は、薬学としてのアイデンティティーの視点から重要であり、その方策について検討したい。

6年制の薬学教育について、「医療現場において問題発見から解決までの能力を持った、リーダーとして活躍できる人材を育成する専門教育、特に今後国際的にも活躍し得る人材をどのように世の中に送り出すか、が重要な問題である」とのご指摘を頂いた。この点に関しては、北大薬学部がどのような人材を養成するのかという教育の根幹に関わる重要な問題であり、議論をさらに深め、その方策について検討したい。また、ご指摘のように、6年制薬学教育に対する準備状況・対応は、施設の点も含めてまだ十分でないと言わざるを得ず、その準備に全力をつくす所存である。学生による授業評価の、教育へのフィードバックシステムの構築についても、検討したい。

3. 教育活動【大学院教育】について

大学院教育について、生命科学院がスタートした事は特筆に値するとのコメントを頂いた。また、生命科学院でのカリキュラムについても、大きな改善がみられるとのコメントを頂いた。平成18年度にスタートした生命科学院では、大学院教育の実質化に向けて、ご指摘のように薬学としてのアイデンティティーを堅持しつつ、今後も改善に努めたいと考える。

大学院の研究成果について、インパクトファクターの高い英文雑誌への投稿が多く、活発な研究指導と論文指導が行われているとのコメントを頂いた。一方、「研究室間に、研究業績、競争的資金の獲得、学術振興会特別研究員の数などで差が見られる」、「学振の海外特別研究員などをもっと積極的に受け入れるような努力が必要」、「博士課程の院生と外国人院生の人数がやや少ない」とのご指摘については、各研究室の努力とともに、研究院全体としても改善に努めたい。また、博士号の位置づけについては、薬学としてのアイデンティティーの確立や、薬学を専攻する博士研究者の育成の視点から、議論をさらに深めたいと考える。

4. 研究活動について

研究活動については、研究業績は良好であり、極めて特徴のある質の高い研究を活発に展開されており、また、研究領域のバランスもよいとのコメントを頂いた。本研究院の研究成果が高く評価されたことに誇りを持って、今後も研究活動に邁進する所存である。

また、競争的研究費の獲得状況は良好であり、大型研究費の受け入れは同規模の大学では最高クラスであるとのコメントを頂いた。一方、「委任経理金や民間等との共同研究、さらに大学院生の学振特別研究費等がやや少ない」というご指摘や、「民間等との共同研究受け入れをさらに活発化されたい」とのご提言を頂いた。これらについては、実現に向けて前向きに検討したいと考える。さらに、「助教授、助手、博士課程学生など若手研究者の研究活動の活性化が必要である」とのご指摘については、次の時代を担う若手研究者の育成は極めて重要な課題であり、検討のうえ、実現に努めたい。

さらに、ご指摘頂いた「他領域との融合研究の活発化」、「研究成果の特許戦略の推進」、「薬剤探索研究の活性化」についても、研究活動の重要課題として具体的に検討したいと考える。

5. 社会的活動・国際交流について

生涯教育特別講座について、年々参加者が減少しているとのコメントを頂いた。生涯教育特別講座の位置づけや内容等について議論をさらに深め、本講座の取り組みを強化したい。

オープンユニバーシティ、体験入学、及び国際交流(国際学会への参加、国際学会・シンポジウムの主催)について、努力しているとのコメントを頂いた。一方、「外国人留学生の受け入れがやや少ない」とのご指摘については、学振や外部獲得資金などにより、外国からの博士研究員の受け入れを推進するために、教員個人の努力とともに、研究院全体として支援体制の充実を図っていきたいと考える。

さらに、ご指摘頂いた「北大の地理的利点も生かした継続的な質の高いシンポジウムの実施」、「アジアとの交流の促進」、「市民向け講座の実施」、「高校との連携活動の推進」についても、実現に向けて努力したいと考える。

6. 総合評価について

総合評価として、「管理運営、組織、教育活動、研究活動、社会的活動は、現行の状況下では適切な努力がなされ大きな成果を上げている」、「平成13年度から平成17年度の5ヵ年の間、21世紀COEプログラム採択、大学法人化、薬学教育6年制への準備、大学院の改革など、大きな課題に適切に対処してきた」、「これらの作業の中、研究・教育、研究費の獲得も順調に行われた」、「企業サイドから総合的に見ても、北大薬学部はバランスの取れた教育を行ってきており評価は高い」とのコメントを頂いた。この総合評価に甘んじることなく、さらに当大学院・学部の改革・改善と教育研究の活性化に向けて努力する所存である。

「基礎研究の重視」、「Chemical Genomics/Chemical Biology領域での拠点形成を目指した取り組み強化」、「研究環境やスペースの改善」、「基礎と実学のバランスの維持」、「トランスレーショナル研究や地域コミュニティーに対する優秀な医療人の輩出を志向した医薬連携の推進」などのご指摘については、具体的に検討し、実現に努めたいと考える。

なお、「外部評価委員として、外国で第一線の教授として活躍されている日本人の先生に、外国の大学との良悪を比較して貰っても良い」とのご提言については、次回の点検・評価の際の検討課題としたい。

以上、今回頂いた数々のご指摘・ご提言を真摯に受け止め、その実現を期して努力する所存である。

最後に、ご多忙中、当研究科・学部の評価をお引き受け頂き、貴重なご意見・ご提言を頂いた外部点検評価委員の先生方に厚く御礼申し上げます。

北海道大学大学院薬学研究院
点検評価委員会委員長 横沢 英良

自己・外部評価